商談力強化のためのロープレ訓練の効果的方法
(※このコラムは、2016年10月のマンスリーレポートに掲載されたものです。)
商談力強化の施策として、「ロープレ訓練」は多くの企業で採用されています。
当社でも多くの企業でロープレ訓練による商談スキル向上の支援をしておりますが、どのような考え方・方法で訓練をするかによって、その成果は大きく変わってきます。
正しい考え方と方法によってロープレ訓練を効果的に実施すると、商談スキルを飛躍的に向上させることができます。
当社では、「共感力強化」と「啓発力強化」の2つを軸として、ロープレ訓練を実施しています。
それは、この2つが商談力強化の上で欠かすことのできない重要な要素だからです。
この共感力・啓発力が不足(下記参照)していると、商品力や値引きに依存した商談となってしまってしまい、受注機会の損失や収益の悪化を招きます。
当社の経験では、営業の約8割は、この共感力・啓発力が不足しています。
「うちはそんなことないよ」と思われるかもしれませんが、当社でロープレ訓練を支援すると多くのマネジャーが営業メンバーの共感力・啓発力不足に驚きます
<共感力不足>
- 笑顔が少ない、会話が弾まない。
- 商品説明は上手だが、お客様の気持を汲み取れず、話を受けとめない。
- その結果、お客様のニーズをつかめない。
- ニーズにあった提案ができない。ハードル、懸念を解除できない。
<啓発力不足>
- 自社、自店舗の強み・メリットを訴求できない。
- 快適性や安全性、デザインなどがもたらす新生活へのあこがれが訴求できない。
- 残価保証型プランの新車を3年毎に乗り換える魅力を訴求できない。
この共感力・啓発力不足を解消するロープレ訓練のポイントは、以下の3つです。
①商談ロープレを初期接触からクロージングまで実施する。
②商談ステップ毎の課題を明らかにし、適切な解決策を提示する。
③課題解決のための正しい練習方法を実施する。
①商談ロープレを初期接触からクロージングまで実施する。
多くの企業では、商品特徴の説明など短時間のロープレ訓練が多いですが、初期接触からクロージングまでの商談全体のロープレ訓練とすることが重要です。この訓練ですと、1回(1人)あたり1時間から1時間半の商談となり、その商談に対する課題のフィードバックまで含めますと時間がかかります。しかし、顧客情報を収集し、ニーズに合った提案、ハードル解除によってクロージングに至る一連の商談プロセスが全体として向上しないと、本当の商談力強化になりません。また、商談スキルの低い営業マンをそのままにし、機会損失や顧客離れを招く状況を放置することで、商談力が高ければ得られたはずの逸失利益を考えれば、時間をかけても取り組む価値は十分にあるのです。
②商談ステップ毎の課題を明らかにし、適切な解決策を提示する。
ロープレ訓練を実施するにあたっては、お客様役以外に客観的に営業メンバーを観察し、良かった点、悪かった点をフィードバックする役割を置くことが重要です。商談ステップ毎に適切なフィードバックがないと、商談スキル強化が遅れることになります。商談ステップ毎解題とその解決策の例は以下の通りです。
商談ステップ | 商談課題 | 課題解決策 |
---|---|---|
初期接触 | ・笑顔がない、ぎこちない ・世間話が続かない | ・笑顔で話すことを意識して練習する ・雑談力訓練(話題ネタ整理) |
情報収集 | ・情報の抜けもれが多い ・尋問調の聞き出しになる | ・情報収集項目を再確認する ・アイスブレイクを練習する |
自社・自店の訴求 | ・自社や自店のメリットが話せない ・メリットを魅力的に話せない | ・自社や自店のメリットを整理する ・訴求トークを練り上げる |
車種提案 | ・車の特徴だけを伝える ・顧客の使用状況に合わせた提案がない | ・顧客ニーズに合わせた特徴を整理する ・顧客のカーライフをイメージする |
車・金額の合意 | ・合意を取らずに進んでいく ・ハードルを解除できない | ・意識して合意を取る ・ハードル解除トークを整理する |
クロージング | ・テストクロージングがない ・自信をもって背中を押せない | ・テストクロージングの意味を確認する ・自信を持つ |
③課題解決のための正しい練習方法を実践する。
個人の課題によってその解決のための練習方法・対策が異なります。正しい練習方法・対策によって効率的に商談スキルを強化することが重要です。ときには、商談スキルよりも姿勢の問題であることもあります。その場合には、姿勢を正すことが必要になります。
<課題別練習方法・対策例>
- 商品・サービスの知識不足:トークを覚える壁打ち(1人)ロープレ
- 商品・サービスの理解不足:メリットデメリット比較、Q&A検討
- 商品の魅力が腹落ちしていない:喜んでいるお客様の声や事例に触れる
- 自分本位の商談をしてしまう(共感力不足):姿勢を正す:Win-LoseからWin-Winへ
- 何度同じ指摘を受けても変われない:姿勢を正す:素直さ、誠実さ、謙虚さを失っていないか
以上の3つのポイントを踏まえてロープレ訓練を実施すると、見違えるように商談スキルが上がる方がいます。
それは、新人でもベテランでも変わりません。営業育成のヒントになれば幸いです。
人材開発部 シニアコンサルタント 設楽 教之 Shidara Noriyuki
大手経営コンサルタント会社入社後、多くの生産性改善・営業力強化コンサルティングを担当、その後管理本部長として経理・財務・法務・人事などを統括。現在は、企業マネジメントの分野におけるトップコンサルタントである。