「販売促進」と「店頭演出」

「販売促進」と「店頭演出」

カテゴリ:経営コラム, 車販収益増大

「販売促進」と「店頭演出」

(※このコラムは、2017年10月のマンスリーレポートに掲載されたものです。)

「ポジショニング」と「ベネフィット」

連載の最終回となる第3話は、店頭演出のお話です。
店頭演出をお伝えする前に、押さえておきたい言葉があります。
それは「ポジショニング」と「ベネフィット」です。
これらはマーケティング用語として使われますが、あまり聞き慣れない言葉かも知れません。
様々な解釈がありますので、ここでは以下の様に定義します。

  • 「ポジショニング」
    消費者の頭の中に、自分たちのブランドをどのようなものとして位置づけてもらうかを考え、それを実現するようなコミュニケーションを行うこと
  • 「ベネフィット」
    商品を手にすることで得られる本来の利益やその先にある未来

ご紹介する会社は、この2点を念頭に、自社の強みを整理しました。

  • 残価クレジットの仕組みがあること
  • 40万円以下の低価格車両の販売を続けてきた実績があること
  • 指定整備工場を完備していること
  • 社長が整備士兼検査員であり、相場に明るく更に営業経験と広告作りの経験が豊富なこと

この4つを勘案して、
“新車が無理なくお得に楽しく買える店”
“中古車は間違いない商品を安心してお得に楽しく買える店”
を「ポジショニング」としました。
この効果を高めたのは、「ベネフィット」です。
単なる安さを訴えるのを止め、選ぶ楽しさ、所有する喜びを前面に訴求して行きました。
それでは具体的に、どのような活動を実施してきたのかを記載します。

販売促進【DM】

【新車】
残価設定プランはそのままに、安さや買い易さだけの告知を止め、選ぶ楽しさや所有する喜びを提案しました。

  • 各車両の開発コンセプトや利点、所有する喜びを整理し、購入後のイメージを提案。
  • 最低限必要な諸費用のみの乗り出しパックから、充実した用品を揃えた快適パックまで、選ぶ楽しさをオプションとして追加。
  • 現実的に買えるイメージを持っていただくため、端数まで記載。
  • スッキリしたカラーデザインと大きめのB4サイズを活用。
    文字も大きくし、高齢ユーザーでも抵抗なく御覧いただけるように改訂。
  • 人気車両を1台に絞り込み、買う利点はもちろん、購入したら何ができるか?
    という活用提案を、A5版厚紙手書きDMで作成し、保存いただける仕掛けをつくった。

【中古車】
“中古車は壊れる”“不安”という悪いイメージをなくすことを主眼に置きました。

  • この商品を扱う会社がどんな会社なのか?
    どんな人がどんな考えで、どんな商品を揃えているのか?
    というユーザーの気になる点を解決するコメントを明示。
    具体的には、在庫回転の速さによる鮮度の高さ、社長の目利きの確かさや整備士として商品状態を把握している点をアピール。
  • 新車同様“選べるパック”を設定し、低価格車は洗車やオイル交換、高額車はバッテリー・冬タイヤ等、実際必要なオプションをパックにした。
  • 保存いただくことを狙い、DMをA4厚紙で作成したほか、目立つ配色を使い、新車とは一線を画すDMであることを一目で分かるようにした。

【買取・委託販売】
買取DMによって来店された方には全件委託販売を提案しました。
仮に査定が低くても預かり、成約できたときには少額でもお返しすることで委託販売の魅力が伝わり、紹介をいただける状態になりました。

  • A5サイズ厚紙用紙で作り、保存いただけるようにした。
  • 委託販売用、要望車両用、高査定が期待できる車両用など数種類のバリエーションを作り、タイミングを計り、交互に訴求。

店頭演出

基本として、DMデザイン、アイコンと連動させ、一目でDMの店とわかる店頭にしました。

【看板】

  • 買取看板は社長の顔をあしらったアイコンを組み込んだ。
  • 目が行きやすいドアや店内にも専用の買取ノボリを作成し、上記同様の内容で訴求。
  • 新車用DMを拡大させ、各大型窓に演出を施した。

【車両展示・店頭演出】

  • どんな車両でもしっかり整備し、外装も整え、“パッと見キレイ”な状態で展示した。
  • 40万円以下の車両は第2展示場に置き、派手な花輪で安さをアピール。
    また、見積書を掲示し、総額も一目でわかるPOPを作成。
  • 買取DMと連動させるため、道路沿いはすべて買取ノボリにした。
  • 新車は商談ルーム近くに展示し、新車用ノボリで盛況感をアピール。
  • 新車DMと連動させるため、各車両には各パックプランを明示。同時に、カラーバリエーションや特徴的装備が一目で分かり、展示車を見ながら購入後のイメージができるようにした。
  • 上記の状態を維持するため、メンテナンス、5Sに力を注いだ。

基盤数600件のこの会社は、これらの取り組みで、カーリンク加盟前に比べ、僅か1年足らずで車販部門は販売台数・粗利が2倍、需要期では3倍の実績を叩き出せる状態になりました。


単に
“ここにこんなお得なクルマがあります”
という告知、演出から
“あなたの願いを叶えてくれるクルマがここにあります、なぜなら・・・”
という内容に変えただけで、商談数150%、査定数380%を実現できるのであれば、お試しいただける価値があるのではないかと思います。

まとめ【1話~3話を終えて】

第1話では経営理念の大切さ、第2話では現実を直視する勇気を持つこと、そして今回は販売促進と店頭演出という具体例をご紹介しました。
これらは一気通貫しています。ご来店いただけるお客様が購入後、もっと喜んでくださりファンとなり、さらにご紹介をいただける善循環をイメージしました。

もちろん、順風満帆でここまで来たわけではなく、相次ぐ試練を乗り越えてきたこその結果です。
何度も挫折感を味わう中で、ひるむことなく、果敢に挑戦し続けることができたのは、第1話でお伝えした経営理念のお蔭なのです。
経営理念に書かれている内容を胸に刻み、ここから業績を高めるためのストーリーを、社員と共に考えていただける機会になれば嬉しく思います。

浜口 隆 Hamaguchi Takashi

浜口 隆 Hamaguchi Takashi

自動車業界をはじめとした様々な業界における業態開発、マネジメント、経営コンサルタント等、多岐に亘るキャリアを経て、2006年のカーリンクチェーン発足時からSV(店舗指導)の中心メンバーとして活躍。
自動車整備業、サブディーラー、中販店、カーディーラー、SSと様々な加盟企業を担当し、SV業務を推進する一方で、オーナーの要望に応える中で各企業の組織全体の人材育成や業務改善等の支援活動を行い、次々と組織力強化を実現している。

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