【小阪裕司コラム第187話】売上を2倍にした、たった一言とは

【小阪裕司コラム第187話】売上を2倍にした、たった一言とは

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第187話】売上を2倍にした、たった一言とは

今回は、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、リユース&リサイクルショップからのご報告を紹介しよう。報告をくださったのは同店の店長。お客さんに発信するたった一言がその商品に対する購買行動を変えるという好例だ。

商品はベッド。同店では多くの家具も扱っているが、ことベッドに関しては「直接肌に触れる商品はどうも…」と敬遠されることが多く、この抵抗感をどう取り除くかが課題だ。そんななか、接客時に効果があったキラーワードをPOP(店頭販促物)に書いて貼ったら大きな成果が出たとのことでご報告をいただいた。

売り場に貼ったPOPは4枚。まず1枚目に「中古のベッドに抵抗感があるお客様へ」とあり、2枚目、3枚目は「どんな高級旅館も」「どんな高級ホテルも」。そして4枚目にはこう続く。「お客様がお帰りになったらベッドまでは入れ替えません。シーツを変えれば気持ちよく寝れますよね リサイクル品も同じかと」。

これを読んで私も「たしかに!」と思わず声が出たが、まさにお客さんも同じで、このPOPを貼って以降、ベッドの売上は2倍になった。  

ここでのポイントは「抵抗感をなくす」ことだ。昨年刊行した拙著『「価格上昇」時代のマーケティング』で“2つのハードル理論”を論じたが、それは、「人には、実際に『買う』と行動するまでに2つのハードルがある」というものだ。「買いたいか・買いたくないか」が1つ目で、2つ目は「買えるか・買えないか」。この2つを越えてはじめてお客さんは「買う」となり、売り手にとっては、そこではじめて「売上」となる、という理論だが、2つ目のハードルは、実は意外と気づきにくいもの。今回のベッドに関する抵抗感も、この2つ目のハードルに該当する。「いいベッドだな。値段も妥当だな」と、つまり「買いたい」となっても、この抵抗感によって「でも…」となり、「買う」には至らない。ならばそれを取り除くことで売上は伸ばせるのだが、この「2つ目のハードル」は意識しておかないと気づけない。結果、「ベッドは中古品で売るには難しい商品だね」などという、一見もっともらしい理由で売り手側が納得してしまうものなのである。

その点、今回の例は秀逸だ。たった一言で「たしかに!」となり、抵抗感は霧散し、「買う」となる。この「2つ目のハードル」に気づくこと。そして、たった一言でもそれを覆せることを知ること。それらもまた、「売るためのコツ」なのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

おすすめの関連記事

【小阪裕司コラム第186話】何をするか。何をしないか

カテゴリ : 小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

昨年暮れ、一昨年に入会したワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)の会員さんから、この約1年半の実践と結果のとりまとめをご報告いただいた。業種は...

【小阪裕司コラム第185話】いままでの値段は何だったのだろう

カテゴリ : 小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

今年は、拙著『「価格上昇」時代のマーケティング』を上梓させていただいたように、「値上げ」がホットトピックだった。今日は、そんな今年を象徴するような値上げのお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商...

【小阪裕司コラム第184話】リピーターが増え続けるドライブインとは2

カテゴリ : 小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

前回、鮎の塩焼きが名物の、あるドライブインでの、リピーターを増やす取り組みをお話しした。一見客が多くなりがちな業種ではあるが、前回お伝えしたお礼状など種々の取り組みが功を奏し、リピーター増に成功している。 お礼状を送ると...

【小阪裕司コラム第183話】リピーターが増え続けるドライブインとは1

カテゴリ : 小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

今回は、鮎の塩焼きが名物の、あるドライブインでの、リピーターを増やす取り組みのお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員からのご報告だ。...

会員制サービス
「CaSS
(Car-business Support Service/キャス)」
に関するお問い合わせ

お申し込み方法やサービス内容、その他ご不明な点などがございましたら、
お気軽にお問い合せください!

  • 03-5201-8080
  • お問い合わせフォーム