【小阪裕司コラム第259話】この一言の違いが4倍の売上に2
【小阪裕司コラム第259話】この一言の違いが4倍の売上に2
今回は、前回の続き。お客さんに何を言えば「買いたい」の気持ちにスイッチが入るのか、のお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の美容サロンが物販の売上を伸ばすためまず取り組んだのは、店主自身が使って良いと感じている洗顔料だった。まず考えた訴求ポイントは「たった5秒で洗顔できます!」。しかし結果につながらず、次に訴求を変えたところ、4倍売れるようになった。
この事例からは気づきが多いが、まずは同じ商品でも、訴求点を変えれば大きく売れ行きが変わるということ。ゆえに、売りたい商品が思ったように売れないときは、訴求点を見直すことをまず考えることだ。まして同店は、取り組み前、店頭に商品は並んでいたものの何の訴求もしていなかったとのことで、それでは売上は生まれない。事実今回の取り組みの際、もう4年間通ってくれている顧客から「化粧品、売ってたんですね!」と言われたとのことだった。
また、今回の例で注目すべきは、お客さんの心が動いた訴求点が、「たった5秒で」のような機能にまつわるものでなく、「私が6年も使い続けている素晴らしい化粧品があるにもかかわらず、皆さんにきちんとお伝えできていませんでした」だったことだ。この訴求が心を動かすには不可欠なものがある。それは、店主に対する信頼だ。それがあってはじめてこの訴求が力を持つ。そういう意味では、顧客からの深い信頼があれば、必ずしもセールスコピーのテクニックを駆使しなくても売上を作れることも分かる。「あなたに紹介すべきものがあります」だけでも、人の心は動くのである。
もうひとつ、店主は訴求点を変えた後、売り場にある改善を行った。それは先の訴求点で作ったPOP(店頭販促物)の横に「サンプルが欲しい方は『サンプルありますか?』と、お声がけください」と書いて貼ったことだ。こういう一言がお客さんに発信されているかどうかは案外重要なのである。
今回の取り組みを経て店主は、そもそも売っていることのアピールができていなかったこと、商品やパンフレットをただ並べているだけでは風景になってしまうのだと痛感したという。そして、訴求点を考え、改善を加えることで結果は生まれ、さらに普段からの信頼があれば、より良い結果となる。それが「売れる」ということなのである。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。
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