【メンテナンスショップレポート㉕】「査定力」を高める

カテゴリ:整備収益増大, 關友信の車販取り組みのための基礎工事
【メンテナンスショップレポート㉕】「査定力」を高める

※執筆・2024年11月コラム
年末が近づいており慌ただしさを感じるが、この1年を振り返ると、とにかく中古車が売りづらかったと言える。新車の出荷停止や納車の長期化の影響で24年上期の新車販売は2年ぶりマイナス、それにより下取の中古車流通が減少、需給の均衡が回復せず、相場上昇に歯止めがかからなかった。毎月のオークションの平均成約単価は昨年対比で10万円以上高く、中古車販売店のバイヤーは会場で途方に暮れていた。
このような状況で有利なのは、ユーザー仕入れが強い店舗である。以前にも書かせていただいているが、オークションで仕入れにくい時こそ買取や下取といったユーザー仕入れに注力するべきであり、在庫車を増やすだけでなく、オークションで売却することでも利益を上乗せすることができる。
さて皆様は、ユーザー仕入れに欠かせない「査定力」に自信はおありだろうか。
査定に求められるのは、対象の車を客観的に評価することだ。平たく言うと、その車をオークションに出品した際に、評価点が何点になるのかを正しく言い当てることである。外装の傷や凹み、部品の欠損や鈑金歴・加修歴、内装の状態などから、正しい評価点を与えることが求められる。
また、中古車の価格を大きく左右する要素に「修復歴』があり、査定額に影響を及ぼす。公取協の定義として、車体の主要骨格部分のいずれかを交換もしくは修正した車両を「修復歴車」と呼ぶが、一般的に修復歴車は通常の車両に比べて避けられる傾向にあるため、再販にあたっては、それなりに価格を下げなければ売れないのが現状だ。

「修復歴車=事故車」と解釈される場合が多いが、事故を起こした車両でも、バンパーやドア、フェンダーを交換したとしても、骨格部分ではない外板パネルを交換しただけでは、修復歴車にはならない。したがって、査定を行う際には、正しい知識を持ち、見落としのないように細心の注意が必要となる。
また、経験を積むにつれて、気の緩みや経験上の思い込みといったものによって査定が粗末なものになり、「見落とし」が発生してしまうということがある。私が出張査定センターの責任者をしていた際に、査定ミスが多いのは、経験の浅い初心者ではなく、むしろベテランだった。初心者はミスを恐れ細心の注意を払って査定を行うが、ベテランは油断して、ルーフやサイドシルなど見づらい箇所の傷や凹み、インサイドパネルやピラーなどの修復歴を見逃すことが多かった。
このような「見落とし」を防ぐためには、査定の手順を一定にすることが有効だ。正しい手順を学ぶことで、査定ミスを防ぐことができる。加えて、お客様を待たせることなく、短時間で、正確な査定を行うことできるようになるだろう。
査定の研修は、保険会社やオークション会場などが主催して開催されている。また、チームエルでも修復歴のある車両を使った実技研修を定期的に行っているため、関心がある方は、ぜひお問い合わせいただきたい。

常務取締役 關 友信 Seki Tomonobu
損害保険会社の営業社員から独立しプロ代理店を経営、その後、自動車販売店での企業を目指し、直営店に入社する。販売店の現場で買取査定や販売業務を経験し、直営店の店長やエリア統括マネージャーとして活躍する。2006年に愛車広場カーリンクのチェーン展開を開始したのと同時に、カーリンク基礎研修の開発に着手、カーリンクチェーンの研修チームを統括する。その後も直営店の出張査定センターのマネジメントやディーラーコンサルティングなど、幅広く様々な仕事を経験、2014年からはCaSSの会員制度を立ち上げ、会員向けのサービスや企画を開発。
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