【川崎大輔の海外コラム】~技能実習生と高度人材を同時採用!?

【川崎大輔の海外コラム】~技能実習生と高度人材を同時採用!?

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【川崎大輔の海外コラム】~技能実習生と高度人材を同時採用!?

コロナ禍にもかかわらず、厚生労働省からの届け出状況では外国人労働者数は172万人と過去最高(令和2年10月末)とのこと。自動車整備業界でも同じように活用が進んでいる。

技能実習生と高度人材を採用

技能実習生ヴァン氏・上田常務
高度人材ズン氏(左から)

岐阜日石株式会社(和田隆社長、岐阜県)は、ベトナムから3名の技能実習生を受け入れている。和田社長が直接ベトナムを訪問し日本語学校や研修センターを見学し、自身でまず人材や市場を理解した。その後すぐ、上田常務がベトナムのハノイを訪問して実習生と面接。2020年11月に実習生の来日が実現した。また、その実習生の来日前に日本語N2の大卒ベトナム人整備エンジニアのズン氏も採用、受け入れ体制を整えた。


外国人人材活用を決めたのは、人手不足が主な理由だった。ガソリンスタンド業界は特に人材不足が深刻で、若い整備士が少なく高齢化が課題だった。上田常務は「整備専門学校生の多くは新車ディーラーに就職するため、なかなか採用しにくい状況です。また、ディーラーを辞めた人材を勧誘しても、整備業界はもう嫌だ、ということも何度かありました。そんなこともあり、今回、ベトナム人技能実習生を採用しようということになりました。」と言う。さらに「技能実習生の受け入れに当たり、言葉の壁が不安でした。受け入れ先の工場はどのように対応したらよいのか、言葉が通じないので技術指導はどうすればよいか、といった不安がありました。ポケトークを各工場に渡したりもしました。最終的には通訳ができる人もいるとよいのではということで大卒の高度人材も採用。おかげで通訳の不安がなくなりました」。

岐阜日石では技能実習生の受け入れ体制構築のスケジュールを決め、そこから逆算して受入日を調整した。前述の高度人材の採用に少し時間がかかったため、技能実習生の受入日もそれに合わせて少しずらした経緯がある。外国人採用で重要なことは、受け入れ体制の構築にある。技能実習生に限らず、今回のケースのように、外国人の活用には体制構築スケジュールを考えて余裕をもって推進することが大切だ。

一緒に生活を楽しむ

ベトナムの市内に増えてきた自動車

いま、岐阜日石では4名のベトナム人が働いている。「最初はいろいろと心配がありましたが、受け入れてみると、みんな真面目、そして明るいです。そのため、暗かった工場の雰囲気も明るくなりました」(上田常務)。また、「高度人材は日本語がN2で堪能、スタッフ同士のコミュニケーションも促進されるのでとても賑やかです。彼が中心になってくれており、技能実習生たちの通訳もしてくれるので本当に良かったです」と言う。現在、2つの工場にそれぞれベトナム人が2名ずつ勤務している。工場にはそれぞれ整備主任者の日本人指導者がおり、OJTで技術を教えている。「ベトナム人の意識はとても高く、技術の習得が早いです」(上田常務)。


ベトナム人人材が住む寮は、所長クラスの日本人スタッフも住んでいるので、直接生活指導もしている。「日本語教育には、小学校の1~2年生レベルくらいの教科書を提供し、勉強してもらっています」(上田常務)。また「たまにお昼の食事に一緒にいきますが、たいていはみなお弁当を自分で作っています。私の畑の一部を貸してあげており、そこで野菜を一緒に作っています。夏野菜の苗を買ってきてあげると、なす、ピーマン、ししとう、ごうや、インゲンなどを育てていますよ」と笑いながら答えてくれた。

ベトナム人が入社して、社内の雰囲気が一気に変わったという経営者は多い。もともとは人手不足で採用したベトナム人が、明るく、礼儀正しく、素直であり、仕事も一生懸命。外国人の採用は異文化を受け入れることであり、新しい風が社風を変えていく。これは、人手不足の解消以上の大きな資産といえるだろう。

日本の文化を知ってもらう

         研修センター

「コロナ禍だからなのか、お金を使わないようにするためでもあると思いますが、彼らは休日はずっと寮に閉じこもっています。せっかくの実習期間で、どんどん技術を学んでほしいですし、日本でたくさんの思い出も作ってほしい。今年は日本で初めて過ごすお正月だったのでおせち料理を届けてあげました。日本の文化などもどんどん知ってほしいですね」(上田常務)。素直に一生懸命働く彼らといると、日本をもっと知ってほしいという気持ちになる。上田常務は「彼らは、自分から輪の中に入っていこうとする意識が強い。おかげで、職場の雰囲気が良くなっています。まだ短期間ではありますが、5年という期間だけでなく、ずっと日本にいて欲しいと感じます。技術的にも能力が高いですし、人間関係も良いので、今後のベトナム人の教育にまで携わっていって欲しいと思います」と言う。


技能実習制度は、技能等の習熟を図る目的で期間は最長5年。技能実習計画に基づいて技能を習得していく。しかし、自動車整備においては、彼らが日本で学んだ技術を帰国したときに使えるかというと、そのような計画になっていない。例えば、今後は特定整備の対応が必要になるが、こうした高度な先進技術なども使えるように指導していくべきだが、制度上は教えるのが難しい。ベトナムでは生活水準が急激に上がり、新しい自動車も走り出している。最先端技術が扱えないと技術対応も難しくなる。


自動車整備は難しい職種である。外国人用の制度設計をしないと、現時点では技術移転が制度ではできない。日本にいる5年間の単なる労働力となってしまっている。「人手不足解消のためのただの労働者と考えると問題が起こる。最先端の技術も教えながら、彼らに頑張ってもらう必要があります」(上田常務)。彼らの意欲は高い。技能実習性に対して、整備士資格取得のチャンスが与えられるような制度設計が望まれる。


これからますます国際的な人材獲得競争は激しくなるだろう。外国人を積極的に受け入れるなら、魅力的な環境を整えていかなければならない。活用しやすい制度、受け入れ態勢の構築など、自動車整備業界として積極的な道筋を作っていく必要がある。すべての業界の人々が外国人の受け入れ問題に正面から向き合う時代が来たと言える。

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