【小阪裕司コラム第122話】トイレットペーパーへの返信

【小阪裕司コラム第122話】トイレットペーパーへの返信

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第122話】トイレットペーパーへの返信

今日は、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の紙製品(トイレットペーパーやティッシュなど)卸売業の方のお話。同社では、BtoBの営業現場など様々にワクワク系の取り組みを進めているが、今回はネット通販のお客さん、エンドユーザーとのお話だ。

卸売りメインの同社では、2年前にエンドユーザー向けのネット通販を始めた。ワクワク系の実践はこの5月からだが、まず行ったのは、これまで放置していた購入客との絆作り。特に、昨年コロナ禍のトイレットペーパー騒動で一時増えた新規購入客へのアプローチだ。といってもワクワク系自体をやり始めたばかり。まずは基本通りに、メルマガとニューズレターを送り始めた。ちなみにレポートにはそのレターも添付されていたが、「最近はまっているお酒」や「長男自転車デビュー」などの自己開示ネタと「驚きの事実?トイレット紙に表裏がある!?」などの面白・お役立ちネタがメインの、セオリー通りのものだ。

これが嬉しいのには理由がある。実は同社がネット通販している紙製品は、特に目新しいものやここでしか買えない独自のものではない。本人曰く「弊社の商品はどこにでも売っているものなので、コロナのような非常時以外には購入されないのかなと諦めていました」。しかし最近はいわば指名買いのような買われ方が目立つ。 そしてさらに嬉しいことは、これまでまったくなかった購入客からのメールが届き始めたことだ。具体的には、「1回しか購入していないのに丁寧なレターありがとう。熱心さが伝わってきます」「レター、記憶に残りますね」「地域に根ざしてらっしゃって、堅実そうな会社」「(レターに書いた日本酒の)手取川あらばしり、飲んでみたいです」「(返信のメールが)かなり長くなってしまいましたが、感謝の気持ちがいっぱい♪ということで、ご容赦ください」などなど。それまでの2年間にはこのような反応はゼロ。この違いを本人は「嬉しいなあと噛みしめています」。

どこにでもある商品だから、ネットだから、田舎だから、都会だから、BtoBだから、などなど、とかく「だから」の多い世の中だが、商いはすべて“人の営み”であることに変わりはない。そこには普遍の法則と、それが発揮されたときの商い本来の悦びがあるのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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