【小阪裕司コラム第132話】見るべきものは見えているか

【小阪裕司コラム第132話】見るべきものは見えているか

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第132話】見るべきものは見えているか

ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、ある食品のネットショップを営む方からご報告をいただいた。昨年と、ワクワク系に取り組み始めた今年との、お客さんの購入データを比較しての報告だが、その結果もさりながら、そこに書き加えられていたことにも気づきがあった。ご紹介しよう。

まずは比較結果の方だが、2回以上購入したリピーターの「人数」と「購入回数」を、昨年1年間と、今年5月から10月までの半年間を比較してみたところ、期間が半分しかないにも関わらず、今年は、人数で120%、購入回数は145%になっていた。

さらに今年のリピーターの平均購入回数を調べてみると、昨年は2.6回だったものが、今年のリピーターはこの半年で早3.1回。単純計算ではあるが、年間にしてみると6.2回購入してくれることになり、2倍強購入頻度が上がることになる。商売をおやりになっている方ならお分かりになると思うが、リピーターの購入回数が倍になれば、売上を大きく押し上げることになる。コロナ禍で通販は好調とは聞くが、これは同じコロナ情勢下の昨年対比の数字である。彼は言う。「会員の皆様が普通に取り組んでいる基本中の基本に取り組み始めただけですが、すでに数値上でこれだけの変化が出ていることに驚きました」。

そんな彼だが、この報告書には、今の報告につなげて、次のことが書かれていた。「最近、周囲と話がかみ合わないと感じることがある」「例えば、選別消費が進むから選ばれる側にならないといけないという趣旨の私の発言に対して、周りの反応は『コロナが明けたら旅行や観光にお金を使うようになる』」「お客さんの財布の優先順位を上げてもらって、うちでの買い物に割ける予算を増やしてもらう取り組みをしなければ!という趣旨の発言に対しては、『裕福なお客さんを取り込まねばならない』」などだ。 スポーツでも習い事でも何でもそうだが、上達してくると見える世界が変わる。以前より一層「何をやればより良い結果が出るか」が分かるようになるし、それを実行することもできるようになる。その上で、まだその段階にない人と語り合うと、見えている世界が異なることも分かる。それが「かみ合わない」というものだ。

昨年から今年、世の中はコロナによって変化が加速した。その中で今、見るべきものが見えているかどうかが将来を大きく分けるだろう。そうしてもうすぐ、2022年がやって来るのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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