【小阪裕司コラム第194話】ちょっとした接点をワクワクに

【小阪裕司コラム第194話】ちょっとした接点をワクワクに

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第194話】ちょっとした接点をワクワクに

今日は、お客さんとのちょっとした接点をよりワクワクするものに変えるお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員からのご報告だ。

まずは、都内で飲食店を数店舗経営する方からの、沖縄料理店でのこと。ラインの会員登録をしてくれた方にお茶のパックをプレゼントしているのだが、社内会議の際、店長からこういう報告があった。「お茶のパックを渡すだけだと物足りないので、『ちむどんどんする券』をお茶の袋にいれてみました!」。

「ちむどんどん」とは沖縄の方言で「ワクワクする気持ち」を言うが、ではその「ちむどんどんする券」でお客さんは何ができるのかと問うと、「スタッフにみせるとサイコロがふれます。ぞろ目がでると素敵なものがもらえます。お客さんによって素敵なものは変えます」。

次いで、同じく都内で、身体作りのパーソナルトレーニング業を営んでいる方からのご報告。

同社では毎年1月を迎えると月謝袋を新しくする。これまでの月謝袋は、老舗の風情あるものを使ってはいるが、単に氏名が書いてあるだけ。なんだか味気ないなと感じ、今年は卯年ゆえ、うさぎのシールを貼ることにした。するとお客さんからは「おっ!うさぎですね!」「可愛いー」など、思った以上の好評が得られた。

そもそもデジタルな支払いがポピュラーな時代に月謝袋自体が珍しいとも言えるが、月謝を現金で持ってきてもらうことで、この金額を自分の身体に投資しているとリアルに感じ、モチベーションも上がると考えてのこと。その意図を話すと、およそ8割の方は月謝袋を選択するとのことだが、その気分をさらに上げられ、コミュニケーションも深まったと彼は語る。 これらの例は、いずれもとてもささやかな取り組みだ。「ちむどんどんする券」は付箋大の紙に「ちむどんどんする券(スタッフに見せてネ!)」と書いてあるだけの簡素なもの。月謝袋の方もシールを貼っただけのものだ。

しかしお客さんの側は案外こういうささやかなワクワクが好きだ。そしてささやかだからこそ、他にもいろいろたくさんできる。また行う方も、行えば行うほど、彼らが「物足りない」「味気ない」と感じたように、ワクワクに敏感になる。そうしてお客さんとのちょっとした接点にワクワクが増えていくことで、お客さんはあなたのファンになっていくのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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