【小阪裕司コラム第195話】〇〇しただけで、客数172%の盲点とは1
【小阪裕司コラム第195話】〇〇しただけで、客数172%の盲点とは1
今日は、あることを行ったら、客数が172%に伸びたお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、にじます料理店からのご報告だ。
同店は、人口2万人弱のある地方の町で60年以上も営まれている、にじます料理店だ。小さな町ゆえ、店主も、「知名度はそれなりにあるだろう」と長らく思っていた。
しかし実践会に入会し、聞く様々な事例の中に、「長らく隣に住んでいたが存在を知らなかったリフォーム店」の話があり、彼も「ひょっとして自分が思うほど自分の店は知られていないのでは」と不安になってきた。
ちなみにこのリフォーム店の話とは、次のようなものだ。大阪でリフォーム店を営むある会員が、新しいお客さんからのリフォーム相談を受け、めでたく大きな受注となった。それはもちろん喜ぶべき話だ。だが、実はそのお客さん、ほぼ隣に長年住んでおり、来店の際こう言ったのだ。「ここにリフォーム店があるなんて、知らなかった」。
このリフォーム店はビルの1階にあり、ウインドウは歩道に面している。立て看板も立てている。しかも、このお客さんの住まいの場所から考えて、これまで何千回と店の前を通っていることは間違いない。しかし、店があることすら「知らなかった」のである。
そこで先ほどのにじます料理店だ。店主は考えた。年に1、2度、今も町内にチラシを打っている。今までは無意識のうちに、店は知られているという前提で、メニューの紹介や、時期によっては年越し料理の案内をしていたが、今回は「『当店を知らない人、聞いたことはあっても訪れたことのない人』を対象に『自己紹介チラシ』を作成することにしました」。
そうしていつものように配布すると、次の月の来店客数は前月比で123%、前年同月比ではなんと172%にもなったのである。
ここには盲点がある。もう長年ここで店をやっている、ここに出店してもう何年も経つ、そういう理由で人は自店の存在が知られていると思い込むが、当のお客さんの方は、あなたの店の存在を知らないことの方が多い。たとえ長年隣に住んでいいても、だ。この事実をまず自覚するべきだし、そこで、今回彼が打ったような手が有効なのだが、今回は「自己紹介チラシ」の内容も秀逸で、成果のポイントでもある。それはどんな内容だったのか?この続きは次回に。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。
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