【小阪裕司コラム第197話】選ばれるために発信すべきもの1

【小阪裕司コラム第197話】選ばれるために発信すべきもの1

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第197話】選ばれるために発信すべきもの1

今日は、お客さんに向けて何を発信すればあなたの会社・お店が選ばれるか、というお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、リフォーム店からのご報告だ。

店主はあるとき、常連のお客さんから次のような言葉をいただいた。「少し先の話になってしまうと思うのですが、リフォームするなら○○さん(店主の名前)にお願いしようと思っています」。

ちなみに「常連」というのは、同店では、今すぐリフォームするかどうかに関わらず多くのお客さんとの接点を持つため、あるこだわりの卵を仕入れ定期的にお届けしており、この言葉はその利用者のお一人からのものだった。

もっとも、普段から「お届け+雑談」で、定期的な濃い接触を意識している店主。この言葉が、いつもお届け時にいろいろ会話しているこのお宅の奥様からであれば驚かない。しかしこの言葉はご主人から。しかもご主人とちゃんと会話できたのは、このときが初めてだったのだ。

ご主人がそう言う理由を聞き、店主はさらに唸った。彼は次のように言ったのだ。「○○さんの葉っぱの写真投稿をいつも見ていたら、きっといい仕事をしてくれそうだ、と感じたんです」。

「葉っぱの写真投稿」とは、店主がプライベートのfacebookにときどき投稿している写真のこと。秋の落ち葉の時期が始まると、事務所の前を掃き掃除しながらお気に入りの落ち葉を探し、自分好みのアングルで、店主の言う「一期一会の自己満足写真」を投稿しているものだ。いただいた報告に添付されていたその写真は、なかなか芸術的なものだった。とはいえ、「凝った写真ではなく、スマホで撮るスナップ写真です」と店主。しかしこのご主人はこの葉っぱの写真を見続け、彼に仕事を任そうと思ったのである。

このエピソードには、これからのビジネス社会で選ばれる会社・お店であるためのとても重要な学びがある。お客さんは何を見聞きしてあなたを選ぶか。そのため、何を発信していなければならないか、についての学びだ。今回の例のリフォーム業界ではとかく「安い」が強調されるが、選ぶお客さんにしてみれば、安さをメインに検討する方ばかりではないし、選ばれる側としてもそうだろう。ではそういうとき何を発信すべきか? ここでは何が功を奏したのか? この続きは次回に。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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