【小阪裕司コラム第208話】お客さんはこんな店を好きになる1

【小阪裕司コラム第208話】お客さんはこんな店を好きになる1

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第208話】お客さんはこんな店を好きになる1

前回、前々回と「お客さんを笑顔にする」というテーマで、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、美容院での取り組みをご紹介した。またそこで、「人はこういう店を好きになる」というお話もしたが、今日は人が店を好きになる真理が垣間見えるこんな話をしよう。

私が知る様々な業種の店から、よくお聞きする話がある。それは、自店が子供たちに強く支持されているという話だ。そのうちの1つを話すと、店は子供服の店。ゆえに、たしかに子供はお客さんだ。とはいえ子供服店の顧客は通常その親なのであって、当の子供に支持されているという話はあまり聞かない。

しかしこの店が常連のある母親からいただいたという手紙には、9才になる息子さんがいかにこの店のことを好きなのかが長々と綴られていた。そのなかにはこういうくだりがあった。「息子の生活はこの店と共にありました。この店の通信を大切にファイルに入れ、宿題もマラソン大会も、この店に行けると頑張りました。そして店のポイントを貯め、2時間店長になりました。その時の写真入り色紙は、リビングのメインに飾ってあります」。 ここで言う「2時間店長」とはこの店のポイントが貯まると交換できる特典の1つだが、2時間だけこの店に「店長」として立てるというものだ。この特典、同店では1番人気なのである。

このように子供に強く支持されている他の店にはクリーニング店もある。クリーニング店となると、一般的にはほとんど子供には縁のない店なのではないかと思うし、この店とて、子供たちの支持を狙ってお菓子などを売っているわけでもない。

しかしここには多くの子供たちが立ち寄って来る。 先日聞いた話はこうだ。ある日ここに小学生の女子三人組が立ち寄った。実はこの店、近く移転を計画しているのだが、あるきっかけからそのことを告げると、彼女たちは一様に「えー!」「どこに移っちゃうの?」「やだー」と言う。店主もこの反応には嬉しくもとまどった。そこで移転するのはすぐ近くだと教えると、一同、「あー、安心した」となったのだそうだ。

いずれもまだ小さな子供たちである。ゆえに彼らは、安さや特典、利便性などではなく、ただ純粋にこの店が好きなのだ。これほどに人の心をつかむ店。その秘密は何なのか?続きは次回。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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