【小阪裕司コラム第241話】思い込みに気づいて前年比6倍に

【小阪裕司コラム第241話】思い込みに気づいて前年比6倍に

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第241話】思い込みに気づいて前年比6倍に

今日は、あなたのお客さんは、もしかするとあなたが売っているものを知らないかもしれない、というお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、食品卸業を営む会社の社員さんからのご報告だ。

あるとき、同社の社長から彼女たちに、次のような指令が下った。「自社・自店の活動の中で、何か思い込みに囚われて見直していないものがないか、あれば一言で価値化できるものがないか、当社の勝手な思い込みはないか考えてみましょう」。

そう問われて社内で意見を出してみると、多くの「思い込み」が書き出された。そこでその中のひとつ、「(わが社は)八百屋じゃないけど野菜も売っていることをお客さんは知っている」の思い込みに挑戦し、扱っている野菜を改めてアピールすることにした。同社は特に魚の扱いで知られている会社ゆえ、である。

折しもいちじくが入荷したところだったことから、これをアピール。具体的には、チラシを作り配達の際に手渡しする、店頭では発砲スチロールの箱の蓋に「いちじく入荷しました」と書きお客さんが通る通路に置く、インスタグラムでも入荷したことを伝えるなどのことを行った。 するとお客さんからは、「こんなの売ってたの?」「今日入荷したんか!」「おたくはいつ八百屋になったの?」「インスタに載ってたやつください」などと言われ、いちじくの売上は前年の3倍に!そこで気を良くした彼女たち、次に自慢の舞茸が入荷して来たことから、これにもチャレンジ。いちじく同様のアピールを行った。

すると早速、「これは、いつ入荷するの?予約できる?」と大人気。たまたま他県から買い付けに来ていたお客さんはこの舞茸を見て、「どうしたのこれ!?めちゃくちゃ良いね!」と大興奮。

やはりその後には「いつおたくは珍味屋から八百屋になったの?」と言われたとのことだが、売上は前年比6倍。上々の成果となったのである。

ここでの学びはズバリ、どの会社にもこういう思い込みがあり、改めてアピールすることが成果を生むということだ。そしてもう1つ大事なことがある。彼女たちは今回の成果を、八百屋ではない同社から舞茸などを買ってくれただけでなく、値段を聞かずに買った方や、口頭の説明だけで現物を見ずに買った方もいたことから、いかに同社が信用されているかが分かったと言うが、これは重要なポイントだ。日頃の信頼に足る商いの上にこそ、今回のような施策が光るのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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