【小阪裕司コラム第238話】お客さんに支持されるお店や会社とは

【小阪裕司コラム第238話】お客さんに支持されるお店や会社とは

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第238話】お客さんに支持されるお店や会社とは

2024年がやって来た。昨年暮れから、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)の会員さんにはお伝えして来ているが、今年は社会の分水嶺。昨年一気に露わになって来た社会変化が、今年は、良いものも悪いものも含め、一気呵成に進むだろう。そんななか我々は、何を拠り所にしていけばいいか。その答えの一端が垣間見えるエピソードが、年末に届いた。

その報告は実践会員の、ある地方の石材店主からのもの。「石材店」は「≒お墓屋さん」。一般のお客さんももちろん大事だが、お寺はとりわけ重要なお客さん。お寺にどれだけ愛顧いただけるかが売上に直結するが、先日、初めてお会いするあるお寺の72歳になるご住職が、付き添いを連れて、杖をつき、わざわざ同店を訪ねて来たという。 石材店の方から営業することこそあれ、住職がわざわざ訪ねて来るのは自体珍しい。

しかもそのお寺は、車で40分程度かかる隣町のお寺。聞くと、しかも住職はつい数日前まで癌で手術され入院されていたとのこと。その中、この石材店が行っている商い上での様々な活動を知り、こんなことを考え、行っている店主にぜひ会いたいと、リハビリを頑張り、早く退院してお越しになったとのことだった。

実際同社はややユニークだ。石を加工できる技術を活かし、地元の受験生に石でできたサイコ(「5」と「9」の目しか入っていないサイコロで「合格サイコロ」とされている)をもう長年プレゼントし続けるなど、独特な活動も多い。中でも、特に今回住職が関心を持たれたのは、同社が最近始めた古い石灯篭を再生する活動だが、これも、石灯篭がほとんど売れない時代に、独特な活動といえるだろう。

そんな店主に会いたいとお越しになった住職。ひとしきり色々なお話をした後、こうおっしゃった。「あんたに元気と希望を貰ったわ。小さな貧乏なお寺やし、これからどれだけ生きられるか分からんけど、何か相談があったら、あんたに頼みたい。」

同社は近年、お客さんからそのように言われることが多い。しかも相手は、今回のようなお寺の住職から、合格サイコロを受け取った親子など幅広い。そして今同社には、注文がひっきりなしに入って来るのである。

会いに行きたい、「何かあったら、あんたに頼みたい」――お客さんが心からそう思うお店や会社こそが今日、お客さんが必要としているものなのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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