【小阪裕司コラム第234話】コミュニケーションの要を損なうと

【小阪裕司コラム第234話】コミュニケーションの要を損なうと

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第234話】コミュニケーションの要を損なうと

ここ数回、顧客に送るニューズレターに自分の母親が認知症になったという、やや重くプライベートな話題を書いた話や、名札に「今、洗濯機壊れてます!」と書いた話など、お客さんとのコミュニケーションに関わる話をしてきた。人と人とのコミュニケーションが商売において重要なことは言うまでもないが、一方、良かれと思って行ったことがコミュニケーションを損なうこともある。今回はそういう実例。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、住宅専門店(新築・中古住宅リノベーション・不動産仲介をワンストップで手掛ける会社)の住生活コンサルタントからのご報告だ。

あるお客さんが貸家にしていた不動産の売却を、CMでもよく知られている、ある大手不動産売買仲介業者に仲介を頼んで進めていた。その方はその会社と専任(1社が独占的に売主さんの仲介をすることができる)媒介契約を結んでもいたが、そういう場合、1社に独占的に依頼することから、最低でも2週間に1回の商談状況の報告が義務になっているとのこと。この度そのお客さんが、契約中の不動産業者の対応に不信感を覚え、セカンドオピニオン的に、住生活コンサルタントの彼女に相談をしに来たのだった。

問題は、今年の2月に契約してから9か月も経っているのにまったく売れないということだったが、聞くと、商談状況の報告義務はきっちり果たされている。当初彼女も、この方がその会社の何に不信感を持つのか分からなかったが、聞いているうちにこういうことではないかと思った。

たしかに2週間に1回商談状況の通知書が送られてきていたし、3か月で専任媒介契約が自動解約となるのだが、これも書面で更新の通知書が来て返信するようにはなっていた。しかしその間、担当者との面談や生の声はなかったのである。

「大手不動産業者としてはDXを推進し、担当者の物件管理をオートマ化して、報告等の手間暇やケアレスミスを防止できる効果を狙ったのでしょうが、お客さんにとっては、『命の次に大事な財産を預けている』のですから、担当者からの面談、最低でも生の声が欲しかったのではないのかと推察しました」と彼女。「明日は我が身と思って、些事、ディティールにこだわりをもってお客さんに接していきます」とのことだ。

人と人とのコミュニケーションはいつの時代も、誰にとっても大切だ。そしてその本質、そこでの要は「人と人」であることなのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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