【小阪裕司コラム第235話】「とうとうわが社にもお歳暮が」
【小阪裕司コラム第235話】「とうとうわが社にもお歳暮が」
今回は、企業間取引がメインの、価格や納期の競争が激しい業界での、「お客様からお歳暮をいただいた」お話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の卸業経営者からのご報告だ。
「とうとうお客様からお歳暮がわが社にも来ました。お礼状付きです」。その報告は、この書き出しから始まる。「入会後、実践術動画(小阪注:ワクワク系の実践手法の詳細解説動画)を見て、お礼状や葉書がお客様から来るという事例を見て、仕入れ品で企業間取引をしているわが社としては『ウチはちょっと関係ないかな』と感じつつも、『お礼状が来たら良いなぁー』と思いながらワクワク系の絆づくり活動をしていると温かいメールやお言葉、お礼状が本当に来るようになりました。
それも驚いたのですが、お客様からお歳暮が来るという実践術動画のお話は『それはさすがにウチではないかな』と思っていました。(正直全く期待もしていなかったです。)ついに本当に来ました。これは驚きました。お歳暮となると、発送費や商品代等費用がかかるはずですがお客様(法人)から来ることに驚きです。仕入れ先のメーカーから来ることはありますが、お客様は初めてです」。
報告書にはお客さんからいただいた立派なお歳暮に加え、遠目にお手紙の写真も添えられていたが、手書きの大変丁寧なもの。冒頭には「今年も沢山お世話になり」の一言も見え、この会社が、彼の会社に感謝していることが分かる。しかしこのお客さんも、同社から購入しているものは、他社からも購入できる大手メーカー品。しかも同社は、かつて同業他社としのぎを削っていた頃の納期や価格の競争は今行っていないため、そういう点で「お世話になっている」のではない。
では何がこのお客さんをしてこうさせるのだろうか。 それは一言で言えば「付加価値の高い仕事」だ。繰り返しになるが、同社が扱っている商品は他社でも購入可能なものだ。となれば、商品で差別化はできない。しかし商売において、お客さんが買っているものは常に「モノ」だけではない。例えば問い合わせへの応対ひとつ、請求書の送り方ひとつ、すべて「お客さんが買っているもの」なのだ。
それら全体の付加価値が高ければ、こうしてお客さんに選ばれる。特にこれから中小企業は、より一層、「高い付加価値で選ばれる」道をこそ、行くべきなのである。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。
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