【小阪裕司コラム第252話】数年でシェア15%アップの営業活動とは2

【小阪裕司コラム第252話】数年でシェア15%アップの営業活動とは2

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第252話】数年でシェア15%アップの営業活動とは2

前回、ここ数年でシェアを15%も伸ばし、地域シェア70%を超えている葬儀社の、「喪家を大切にする」営業活動のお話をした。その具体的な取り組みは「1葬儀1工夫」。その一例として、ある葬儀では、通夜の席で、葬儀の当日が故人の誕生日だったことが分かり、同社は急きょある「1工夫」を実行した。どんなことか。

 実は生前、故人と葬儀について相談をしていた同社、そのころの故人の様子から「きっと○○さん(故人の名前)は悲しい葬儀を望んでいない」と思い、あることを思いついた。そして、誕生日と葬儀とはある意味真逆のものだが、言うだけ言ってみようと喪家にこう提案した。「明日は○○さんの誕生日です。ケーキを用意して皆さんでお祝いしましょう」。

 すると、喪家の皆さんは「いいやん。じゃあ私ケーキ買って来る。手紙も書こうよ」と即座に反応。翌日は会葬者に今日が誕生日だと分かるようケーキを飾り、故人に向けて「誕生日おめでとう」と声をかけてもらった。そして葬儀が終わったタイミングでケーキに火を灯し、誕生日のBGMが流れる中、姪から故人へ向けた手紙のプレゼント。手紙を読み終えたタイミングで今度は甥がろうそくの火を吹き消した。会葬者は皆さん笑顔を浮かべながら涙され、喪主を務めた故人の姉夫婦からは「あんな素敵なことを思いつくなんて、さすがプロですね。私たちには絶対考えつかないことです」との言葉をいただけたとのことである。

なんとも素晴らしい「1葬儀1工夫」だが、この例はまさに「喪家を大切にする」という方針の具現化だ。同社ではこの「1葬儀1工夫」を、月に1回、会議の場で共有し、半期に一度は「BEST工夫賞」を表彰している。「お客様との打ち合わせの中で、どの言葉、どの思いを拾い上げるのか、その思いをどう形にしていくのかを高い位置で競い合うように伸ばしていくため」とのことだ。

ここで「最強の営業」の話に戻ろう。例えば今回の例、誕生日ケーキの葬儀だが、喪家や葬儀に参列した方々は、この葬儀にどういう印象を持つだろうか?同社のことをどう思うだろうか?あなたならどうだろう?「営業活動」とは、「自社を選んでもらうための活動」のこと。ならばこそ、こういう方針、このような具体的な活動こそが「最強の営業活動」となるのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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