【小阪裕司コラム第304話】見よう見まねでもやってみると

【小阪裕司コラム第304話】見よう見まねでもやってみると

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第304話】見よう見まねでもやってみると

 前回は、観葉植物販売のエピソードを通じ、「商品にはたくさんの『売れる切り口』がある」ことをお伝えした。その終わりに、「こういう事例はしばしば埋もれている。それを引き出して全社共有・水平展開することはとても重要な活動」とも。今回はその話題を続けよう。

 ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のあるリサイクル・リユース店は、前回の雑貨店チェーンと同様、地方で複数店舗を営んでいる。今回、社長から「深掘り発表会」なるもののご報告をいただいた。

 同社でも、社内の良い事例をすくい上げ、全社で共有する活動を行っているが、「深掘り発表会」とはその一環で、前回の例のように、異常値を出している現場やスタッフを見出し、その原因を深掘りし、発表・共有する場のことだ。今回共有されたのは、店頭での接客について。それは次のようなことだ。お客さんが「これください」と言ってくる商品は、ほとんどの場合そのお客さんにとってベストな選択ではなく、しかも安価なものが選ばれる傾向にある、とあるスタッフは言う。

 しかし、お客さんの方からそう言われた時点で、「いや、こちらの方がいいですよ」とひっくり返すことは難しく、言われる前に声をかけることが重要だと。そして、この発表会でこの話題が出るということは、実際このスタッフは、この声かけで異常値を作り出しているということだ。

 同店はリサイクル・リユース店だけに取り扱い品目が多く、一人のスタッフがすべての商品に精通するには膨大な知識が必要となり、実際には難しい。詳しいスタッフが不在の場合はどうしても「これください」になりがちだ。しかしそれでも、異常値を作り出している人がやっていることを共有し、全店で見よう見まねでもやってみれば、まったく同じではないにせよ、より良い結果になる。お客さんにはどれが最適な商品なのかを教えられる機会が増えるし、客単価も上がる。

 一人のスタッフが気づいたこと、行った工夫。それによって生み出された成果(≒異常値)。それを全社で共有することは、全社の業績向上につながる。そして、25年実践会を営んで言えることは、「良い事例」は必ず他の人も再現できることだ。しかしその工夫は、今回の声かけのように、ささやかなものも多く埋もれやすい。ぜひ活かしていただきたい。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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