【小阪裕司コラム第129話】畳店100周年記念のレター

本日は、ある畳店が、創業100周年を記念して顧客らに送ったニュースレター（以下、ＮＬ）の話。ワクワク系マーケティング実践会（このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会）会員の畳店だ。

　「実践会に入会して２か月半、色々インプットしながら実践しようと思い、ワクワク系で学んだＮＬを100周年記念として出してみました」とある今回の実践は文字通りのもの。自身も３代目を引き継いでもう30年以上になるが、この機に新たな取り組みに踏み出した。

店主によると、２年前から年４回、ＮＬらしきものを出していたそうだが、「ワクワク系で学んでから思えばＮＬではなく、後半部分に値段の入った商品を並べたセールスレターだった」とのこと。また今年前半に100周年としてアマビエのカードケースを100名にプレゼントする企画を行ったが、応募は４名にとどまり、大失敗だったという。そこで今回ＮＬをワクワク系的にリニューアルし、100周年記念誌として同店創業からの歴史に感謝の言葉も書き加え、作成した。送付先は、「100周年記念というきっかけに新しく絆づくりをするので新規客、顧客、休眠客、流出客の他に見込み客にも『畳』、そして当店を知ってもらおう」と、既存客の他、５年以内に名刺交換をした方や自分が関連している団体の方々、等々だ。

すると様々な反響があった。例えば所属団体の定例会合では、顔なじみの方から「100周年だったんですね。おめでとうございます。」等の言葉をかけられ、あまり挨拶をしていなかった方からも「おめでとうございます。今度、うちもお願いしますね」と言ってもらえた。あるいは、以前からＮＬを送っていた方からは、「今回の方が面白かった。1か月ごとは大変だけど頑張って！」と激励をもらった。「まずは100周年記念誌として出すことで、突然のＮＬでも皆さんが受け入れていただけたのではないか」と店主は言う。ここで学びにしたいことは２つある。１つは100周年のような得難い機会は、このように多くの方とつながる機会にしてほしいということだ。店主も言うように、「周年記念」であることで、より自然に絆を築き始めることができる。

そしてもう１つ、私はそのことを、入会間もない店主に、会員らが集うオンラインミーティングで言った覚えがある。彼はそれを素直に実行したという点だ。いいと思ったら実行する。この素直さ、動きの軽やかさがこの時代、重要だ。それこそが商売の明暗を分け隔てていくものなのである。

小阪裕司　オラクルひと・しくみ研究所代表　博士（情報学）

山口大学（美学専攻）を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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