【小阪裕司コラム第126話】車で30分以上かけてでも2
【小阪裕司コラム第126話】車で30分以上かけてでも2
前回、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の美容院のお話をした。特に着目したのは店主が送ってくれた同店のデータ、町に多くの美容院がある中、車で数十分以上かけて通う顧客が全体の65%、30分以上でも35%もいることだ。そうして選ばれている理由を店主は「お客様にハッピーを売っていたら、遠くからでも買いに来てくれるんですね!」と言うが、これはどういうことだろうか?
そこで今度は、店主からいただいた別のデータを見てみよう。それは、顧客が同店でどんなお金の使い方をしているかのデータだ。それを見ると、次のようになっている。
・美容の施術のみのお客様 30%
・美容の施術&ワクワク商品を買われるお客様 48%
・ワクワク商品のみを買いに来店されるお客様 17%
・自店以外の美容院にも行っているお客様 5%
ここで着目したいのは、美容の施術以外の商品を買う顧客が全体の65%、施術以外の商品だけを買う顧客も17%いることだ。
店主の言う「ワクワク商品」とは、例えばパンや漬物、無添加せっけんなど。特にジャンルが決まっているわけではなく、店主らが「良い」「これはお客様に教えてあげたい」と思った商品だ。もちろん店構えはどこからどう見ても美容院だし、売り場スペースが大きく取られているわけでもない。しかし現在、約8割もの顧客がそれらを買う。店主は言う。「ワクワク系の実践をする前は、美容室なので美容の施術をする方だけが来店されていました。今では、いろんな目的で来店するお客様が増えました。しかし来店されるお客様の共通点は、心豊かなHappyを買いに来ていると思います」。
ワクワク系マーケティング実践会では今、多くの方が旧来の業種の枠を超えようとし、実際に同店を含め、多くの方が超えている。それは奇をてらっているのではなく、現代のお客さんが、この店の例で言えば、施術だけでなくハッピーを求めているからだ。もちろん彼女らのサービスの核は美容の施術にある。それには強いこだわりを持っているし、技術も磨いている。それを核にして整う新しいビジネスの形。それこそが彼女らの言う「ハッピー業」、ワクワク系の道なのだ。だからこそこの店は、顧客にとって「ハッピーを買える店」。車で30分以上かけてでも通う、なくてはならない存在なのである。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。
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