【小阪裕司コラム第236話】「備考欄」と「業績」の関係とは

【小阪裕司コラム第236話】「備考欄」と「業績」の関係とは

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第236話】「備考欄」と「業績」の関係とは

前回、企業間取引がメインの卸業での、「お客様からお歳暮をいただいた」話をお伝えした。これはとても象徴的かつ重要な出来事なのだが、中には「たった1社からお歳暮が来たからといって、それが会社全体の業績に関係があるのだろうか?」と、疑問に思う方がいらっしゃるかもしれない。そこで今回はこういう話をしよう。

ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の調理器具のネット通販会社から、「備考欄」についての実践報告があった。

備考欄とは、ネット通販での注文時に配送や梱包についての要望などをお客さんが自由に記入できるスペースだ。通販サイトのシステムではこの備考欄を非表示にすることもでき、店主も長らくそうしていた。お客さんから無理な要望が書き込まれるのを避けてのことだった。しかしワクワク系を学び実践し成果が出て来るに伴い、非表示に疑問を持つようになった。そこで今回、表示することにしたのだった。

といっても通常は「こちらにご注文時のご要望をご記入ください」と、お客さんの要望の記入欄として使用されている例が多い。しかし彼の趣旨はワクワク系的に「お客さんとの絆作り」。そこで備考欄にはこう記すことにした。「店長・スタッフへの応援メッセージはこちらに書いてね。」

そうしてしばらく経ってコメントの記入率を計測すると、10%を超えていた。3%も書いてくれればいいなと思っていた彼としては嬉しい誤算だった。また、どんなメッセージが書かれているかを分けてみると、約半数を占めたのは「商品に関すること」だった。「じゃがいも切るの楽しみ!」「子どもの離乳食作りに使います!」といったようなものだ。次いで多いのが、「特に急ぎません。発送よろしくお願いいたします」といった挨拶的なもの。その他、応援メッセージやお店に関する高評価など、様々なメッセージがあった。こうして同店でのお客さんとのコミュニケーションは、一層深まるようになったのだった。

この実践をお読みになって、「備考欄にメッセージが届くようになったからといって、それが業績に影響するのだろうか?」という、先のお歳暮の話と同じ疑問を持たれる方がいらっしゃるかもしれない。

しかし、この通販会社と先の卸業者とに共通することは、こうしたことが起こるようになるにつれ、業績がしっかりと安定したことだ。ここに今日、商売を持続させるための重要なカギがある。続きは、今年の締めである次回のコラムで。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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