【小阪裕司コラム第165話】この「不安のなさ」はどこから来るのか

【小阪裕司コラム第165話】この「不安のなさ」はどこから来るのか

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第165話】この「不安のなさ」はどこから来るのか

本日は、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、キッチン用品の通販会社社長からいただいたお話。今回の値上げラッシュと、以前あった出来事とを対比して語ってくれた、貴重な証言だ。

彼ら通販事業者にとっては、今回の値上げラッシュと同様のことが、実は少し前にもあった。2017年、運送業者各社が、荷物量の増加による人員不足や労働環境改善のため、契約運賃の一斉大幅値上げを行った、世に「宅配クライシス」と呼ばれた出来事だ。

彼の会社の契約運賃も、一気にそれまでの2~3倍に跳ね上がった。通販会社にとって契約運賃は生命線、それを断たれてしまったと感じた当時の彼は、この先やっていけるのか不安で胃が痛くなる日々だった。「あの頃はずっと塞ぎ込んでいた」のだそうだ。

しかし今回、当時以上の値上げラッシュの中、彼は言う。不安はまったくない、と。

なぜか。その理由は、次のようなことだ。

彼は、ワクワク系を学ぶにつれ、今までの自分がモノや価格ばかりを見ていたこと、人を見ていなかったことに気づかされた。そしてそこから、少しずつ「安売りしてモノを動かすだけの通販」から、「愉しさを提供する通販」に軌道を変えていった。

そうして間もなく、「楽しく買い物ができました!」と、共感してくれたお客さんから温かいメッセージが沢山届くようになり、この路線で良いのだと確信。徐々に他店の販売価格を気にすることも無くなった。

そんな折、昨年末頃から、仕入先の各メーカーから卸価格値上げの通達が始まり、今もなお止まらない。前回は運送事業者から、今回はメーカーからの値上げラッシュとなったのだが、宅配クライシスのときのような不安は一切なく、スムーズに販売価格に反映させることができているという。 もしワクワク系を学び、実践していなかったら、と彼は言う。「今回の値上げの波にも飲み込まれ、また塞ぎ込んでいたことでしょう。先輩方からも不安がなくなったという話をよく聞きますが、今回の件で私自身もそれを体験することができました」。

この「不安のなさ」の源には、何があると思うだろうか?以前の彼と今の彼の、何が異なるのだろう?これはこれからの「価格上昇時代」を生き抜くにあたってとても重要なことだ。ぜひあなたにも考えてもらいたい。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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