【小阪裕司コラム第127話】移転が「心躍る」イベントに

【小阪裕司コラム第127話】移転が「心躍る」イベントに

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第127話】移転が「心躍る」イベントに

今日は、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のダンススタジオ経営者からいただいたご報告のお話。

 今回同店は、スタジオを移転することとなった。といっても同じビル内での移転だが、そのことを顧客に伝えると「楽しみですね!」の反応が。店主はこう思った。「コロナ禍で良い・うれしいニュースがあまりない中で、うちの生徒さんにとっては、『スタジオが新しくなる』ということが『心躍るイベント』になっているのかも…」。そこで早速この「移転」を「ワクワクイベント」として行っていくこととした。次に、彼女らが行っているイベントを列挙しよう。

ワクワクイベント1:スタジオの公式LINEアカウントで新スタジオの工事の進み具合を投稿。そこでは、不動産の担当者や、今回工事を行ってくれる大工さん(実は生徒)らも紹介。

ワクワクイベント2:新スタジオ工事現場見学会を実施。同じビル内での移転であるため、レッスン終了後に工事現場に案内するというやり方で。

ワクワクイベント3:現スタジオの掲示板に新スタジオのコーナーを設けオープン日を掲示、そこでカウントダウンを実施。

ワクワクイベント4:現在自分がアロマを学んでいることから、「スタジオの香り」を作り、オープン日に生徒たちに、オープン記念として渡す。(予定)

今列挙したものを見てお分かりになると思うが、どれも大げさなイベントではなく、ささやかなものだ。しかし生徒たちには大好評。特に公式アカウントでの、「ダンススタジオの命」である床張り現場の動画投稿は、最も反響が大きかったという。  

ワクワク系では従来この手の“顧客の巻き込み”が盛んだが、ここでの学びは2つある。1つは、今回のような「過程の共有」がこれから一層、「サービス」として重要になる、もっと言えば「提供している価値」そのものになるということだ。最近“プロセスエコノミー”という概念が注目されているが、今回の取り組みはその一例とも言える。そしてもう1つは、この「過程の共有」が「価値」となるためには、そこにコミュニティがあることが前提であることだ。生徒らにとって今回の移転が「心躍るイベント」である根っこには、生徒が単なる「生徒」でなく、このスタジオに絆を感じていることがある。ゆえに、床張りまでもが心躍るものとなる。その上に過程を共有していくことが、また顧客との絆を深くしていくのである。

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